1)障害児医療の特徴

1. 脳性麻痺や二分脊椎などの障害が出生時にみられる先天性のもの、あるいは交通事故による頭部外傷や中途発症する脳退行性疾患や進行性筋ジストロフィーのように成長期に生じる中途障害とがあり多様ですが、いずれの障害児も能力の獲得途上にあり、「特殊な配慮された子育て」が必要です。

2. 脳あるいは脊髄の疾病によるものが大半を占め、重度重複なものが多い。重症度が様々である同一の疾患でも、軽度例は大学病院で重度例は肢体不自由児施設にといった状況です。重複している症状には知能障害・言語障害・運動機能障害・知覚障害・高次脳機能障害・てんかん・自閉症など様々です。感覚は脳の栄養であり、損傷された脳からは絶えず悪化させようとする要素が加わっておりこれを跳ね返して向上させるためには長期の多様な訓練刺激が必要であり、「継続は力なり」が合い言葉のひとつとなっています。

種々の機能や生活スキルの獲得など広範なハビリテーションが中心となり、PT(常勤理学療法士総数416名)やOT(同271名)やST(同122名)等の訓練、手術、薬物療法などの直接的な医療のほかに福祉用具・母親の心のサポートや教育へのアドバイスなど直接の家族支援を多種の専門スタッフがチームとして当たらなければ長期的に良い成果が得られないと考えています。

3. ライフステージにそって、遺伝相談、早期発見・早期訓練、発達に応じた目標の繰り返し設定、就学相談、機能維持・合併症への対応、社会参加への指導、成人となってからの医療等がありいづれも高度な専門性が要求され、一般医療では対応できていません。

障害児整形外科・神経小児科・小児科・リハビリテ-ション科・障害児歯科・脳外科 ・障害児(小児神経)眼科・障害児耳鼻科・泌尿器科・精神科・麻酔科などが必要であり、各科においてもいづれも稀な分野でありかつ難病であるため、各科の高度な専門家でないと対応できません。寝たきりの経管栄養児の経験がないと家庭での子育ては無理と家族が考える場合には、一般病院ではもてあまし、紹介されて肢体不自由児施設にやってくることもあります。看護や療育の必要度が高くていくら施設の負担となっても、来院される障害児を見捨てるわけにはいかないと言わざるを得ません。

4. こころとからだを育て、社会的自立・人間的尊厳を目標として最大限の能力を引き出すようにすることが望まれ、「立てば歩め」の例えのように家族の願いには限りがないと言えます。これに応じきれず家族からの不満の声が届くこともあります。こころとからだを育てる一環として家族との絆を維持するためや在宅の条件を整備するために入院中は家庭外泊訓練をおこなうように努力しています。

5. 虐待児(障害のあるゆえの虐待も多い)や両親の病気・死亡や不和(離婚など)、借金・破産などの貧困などの家庭機能の崩壊で重度な障害では家庭で育てることができず、医療と療育と教育とをうけるための社会的入院児が一定程度常に存在し、肢体不自由児施設以外に受け皿のない場合もしばしばでみうけられ、減少傾向はみられませんで、今後ますます心身障害児療育の専門施設として重症な長期社会的入院児のための肢体不自由児施設に対するニードが一層たかまっていくと考えられます。また、長期入院は単一の原因によるというより、基礎の障害に複雑な原因が絡んだ複雑多様な理由の結果として長期入院となっています。家庭機能の替わりとなるべく、可能なかぎりの努力をしていますが、個々の児の個別的対応のためにはどうしても不足しがちになります。