5)結語

わが国の社会医療保険制度が世界一とWHOが認定したようにOECD先進国29カ国中20位であるにもかかわらず世界に冠たるものであると同様に、あるいはそれ以上に肢体不自由児施設は世界に冠たるものであると考えています。児童福祉法に謳われているように障害児の健全育成は公的責任においてなされなければならず、施策として長い歴史の経過の中で世界に誇れる優れた体制が構築されてきたと考えています。

一般医療と同様に捉え一般医療の基準に連動させると肢体不自由児施設は成り立ちがたく、肢体不自由児施設のおこなっている先端的な努力を突出したものとすることは、先達が築き挙げてきた障害児医療をすりつぶしてしまうものと言わざるをえず、21世紀の国策として安定した経営基盤のもとに充実した障害児医療がおこなえるよう配慮していただきたい。

肢体不自由児施設は様々な障害児への療育のため人件費比率が高く、従来より常に経営問題が特に民営の施設において大きな課題となっており、10年以上前の厚生省の「施設のあり方の研究班」の研究結果においてもこの点が指摘されていました。各施設は重心施設併設、障害者施設併設、センター化など努力を重ねてきましたが、この間、他の施設群に比し措置費の伸びは抑えられ措置費の増額はありませんでした。  重度重複化・少子化による必燃的な職員配置の効率の悪化、地域在宅化にむけての措置費のつかない外来の拡大など新たなニードに応じての努力を厚生省のご理解のもとにすすめ、地域の障害児医療の核となり、第三次の療育圏の最後の施設として存続してきましたが、外来の比率をこれ以上大きくするように軟着陸することは難しい状況です。

肢体不自由児施設は運営基盤、人口などの地域特性、施設の歴史的な背景など各施設みな異なっており、今回の医療費改定の影響は施設ごとにたいへん異なっています。今回の改訂に対して、たいへんな危機感をもって本年度に入って職員への一層の努力や様々な工夫をおこなっていますが、それでも本年4月・5月の請求額を昨年と比較しますと大都市の訓練をしっかりとやっている民営の施設を中心に大きな減収がみられ、努力も限界にあるといっても過言ではない状況にあり、今回の医療費改定によりその存続が困難になる施設がでてくる懸念が大いにあります。肢体不自由児施設のなかでも民営の基幹的な施設が存続できますよう抜本的な体系の確立をお願い申し上げます。

21世紀にむけて障害児者医療体系の概念の下に発達障害児施設としてリニューアルされ、各地域にいきいきと機能するように条件が整備されることが今、最も求められる事ではないかと考えています。

全国肢体不自由児施設運営協議会