3)必要な基盤整備

現在の施設の概要では、公立公営、公立民営、民立民営にわかれる経営体の差、守備範囲地域の対象児数の違い、地域の社会資源の状況、各施設の歴史的な経緯、医師などの中心スッタフの専門性の違いによる施設の得意分野の違いなどにより施設状況は施設毎に大きく異なっています。

障害児医療が政策医療との原則により、肢体不自由児施設は不十分なりにも様々なニードに応じる努力が行えたのは療育の理念のもとに全施設が連絡し合い研修を積み重ねてきたこと、医療保健制度で急性期と認めていただいて出来高払いの障害者施設等入院基本料の新設での包括払い制度ではなかったこと、職員への努力の要請などで可能となったといっても過言ではないと考えています。

現在は(1)障害児の種別分けではなくその統合(総合法性化)および地域療育の観点から肢体不自由児のみではなく知的障害・自閉症などの精神障害にも対応をすすめていますが、従来からとくにこころのケアーにおいても十分ではなく、この分野のマンパワーや設備の不足があり、研修や専門家の導入が要請されている。(2)障害児のみではなく障害者を含むあらゆる障害者医療にも対応をすこしづつしてきていますが、建物構造・マンパワー・政策医療の側面の欠如などのため、とくに経営的な側面より不十分な対応となっており、政策的な位置づけがなされるべく今後の課題として残っています。(3)障害程度区分による属人化への移行が妥当と考えますが、属人化へ再構築するための各種施設群間の合意形成などが今後に残された課題でもあります。重度例に伴う課題としてはレスピレーターの不足などの設備面・夜勤看護婦数の限界(病棟規模が小さく、3人夜勤が組めない)などマンパワーの面、食事介助など多くの人手を要する時間帯の多いことなど常に現場の犠牲の上に何とか最低限の対応をしてきていますが、全面的なてこ入れが必要とされています。(4)頸椎手術や脊柱側弯症への手術も要請されるが、大学病院との連携を行っていますがこの連携も十分ではありません。

現場に根ざした実用的な研究体制がなく、福祉用具を含めて他機関による研究によるものでは効果的な研究成果を得られておらず、肢体不自由児施設での研究体制の整備が望まれます。社会や医療の変化に十分に対応しきれない数々の問題が残されており、IT利用を含めてのエンジニアリング・精神心理学の一層の導入など最新の知識の現場への応用、現場に根付いた研究体制の確立を望みます。